建物賃貸借契約の解約申入れ「正当の事由」とは2
前回までに、建物賃貸借契約において、賃貸人から解約の申入れ又は更新拒絶をするのに必要な「正当の事由」の判断方法を説明しました。今回は、正当事由を判断する際の補完的考慮要素の一つである、立退料についてお話しします。
一般に「立退料」というと、引越料や不動産仲介手数料、新しい借家の敷金礼金が考えられます。しかし、正当事由の判断に当たって考慮される「立退料」とは、このような費用のことをいうのではなく、借家権又は借地権そのものの財産的価値ないし経済的利益のことを言います。つまり、権利そのものを評価した金額のことを言うとされているのです。
では、この借家権又は借地権の財産的価値又は経済的利益(以下、「借家権価格」又は「借地権価格」といいます)は、どのようにして評価するのでしょうか。
借家権価格又は借地権価格の評価方法については様々な手法があり、ここですべてをご紹介することはできません。そこで、ここでは正当事由を補強する立退料の算定の場合の借家権価格及び借地権価格の算定に当たって広く採用されている、「割合法」という法をご紹介したいと思います。
「割合法」とは、借地権価格については、借地の価格に借地権割合を乗じて借地権価格を算出し(土地価格×借地権割合)、借家権価格については、間接的に敷地も利用していることから、借家の目的である建物及びその敷地のそれぞれの価格に、各契約の経緯、内容等に応じた個別の割合(土地に対する借家権割合及び建物に対する借家権割合)を乗じて合計した額をもって、当該借家権価格とする(土地価格×借地権割合×借家権割合+建物価格×借家権割合)ものです。
具体的な借地権割合及び借家権割合は、概ね借家権割合は建物について30〜50%、敷地についてはその借地権価格の20〜30%程度とされているようです。このようにして算出された金額が借家権価格ということになります。
ただし、既に説明した通り、立退料は正当事由を判断する際の補完的要素にすぎません。つまり、どの程度の立退料を支払えば正当事由を充足するのかというのは、借家権価格を評価した後に別途調整する必要があります。
これまで述べてきたとおり、賃貸人側から賃貸借契約の解約申入れ又は更新拒絶をする場合は、そもそも「正当の事由」が認められうるかどうか、認められうるとしても立退料が必要か、必要とすればいくらの立退料が必要か等、様々な問題が絡んできます。
賃貸借契約の解約についてお悩みの方は、是非一度当弁護士事務所までご相談ください。