建物賃貸借契約の法定更新1

建物賃貸借契約の法定更新1

期間の定めがある場合

今住んでいるアパートやマンションを、今すぐ出ていけと言われたら困りますよね。借地借家法という法律は、建物賃貸借契約の場合に、建物賃借人保護のための制度として賃貸借期間の「法定更新」という制度を置いています。

期間更新等の手続は、①期間の定めがある建物賃貸借契約と②期間の定めがない建物賃貸借契約とで異なりますので、今回は、期間の定めがある建物賃貸借契約の法定更新について、ご説明したいと思います。

期間の定めがある建物賃貸借契約とは

民法上、賃貸借契約は原則として20年を超えることができません(民法604条)が、建物賃貸借契約の場合は20年を超える存続期間を定めることも可能です(借地借家法29条2項)。一方、契約期間を1年未満とした場合は、居住者の利益を考慮して、その契約は期間の定めのないものとみなされます(同法29条1項)。

つまり、当事者間で建物賃貸借契約に1年以上の期間(1年でも、30年でも可能です。)を定めることができます。このようにして期間が定められている契約を、期間の定めがある建物賃貸借契約といいます。

法定更新

期間の定めがある建物賃貸借契約の場合、期間満了の1年前から6か月前までに、当事者が相手方に対して更新拒絶又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。つまり、当事者が更新拒絶等の通知をしない限り、契約は更新されることになります。これが「法定更新」の制度です。

また、建物賃貸人から建物賃借人に対して更新拒絶等の通知がなされても、期間満了後に建物賃借人が借家の使用を継続していて、これに対し建物賃貸人が遅滞なく異議を述べなかった場合も、法定更新されたものとみなされます(同法26条2項)。

なお、建物賃貸人から更新拒絶等の通知をする場合は、「正当の事由」が必要とされていて(同法28条)、正当事由が認められなければ建物賃貸借契約は法定更新されることになります。

建物賃貸借契約が法定更新されると、更新後の契約は従前の契約と同一の条件で更新されますが、期間については「期間の定めのない賃貸借契約」とされます(同法26条1項但書)。「期間の定めのない賃貸借契約」の法定更新制度については、次回お話しします。