代金分割
代金分割とは、共有物を競売にかけ、その売却代金を共有者で分けるという分割方法のことをいいます。
共有物の分割は、上記の通り原則として現物分割によるのですが、次の場合には、裁判所はこの代金分割を行なうことができます。
【代金分割ができる場合】
①現物分割ができないとき
または
②現物分割をすると、その共有物の価値が著しく損なわれてしまうとき
①現物分割ができないときとは、たとえば、共有物が自動車や建物の場合など、そもそも物理的に現物分割できない場合をいいます。
次に、②現物分割をすると、その共有物の価値が著しく損なわれる場合とは、次のようなケースが想定できます。
たとえば、共有物となっている土地がもともと狭い土地である場合、この土地を現物分割すると、分割した後の土地が極めて狭い土地になってしまい、その土地の利用が難しくなってしまいます。ですので、このような場合は、現物分割によりその土地の価値が著しく失われてしまうといえます。
できれば競売よりも任意売却で
共有物分割訴訟を提起された裁判所が、分割は代金分割によるべきだと判断した場合、裁判所は代金分割によって分割しなさいという判決を出した上で、共有物を競売にかける手続きを進めていきます。
ただ、ここで注意点があります。この競売手続によると、競売費用がかかる上、土地の本来の時価額よりも安い価格で落札される可能性も高いです。そのため、共有物の売却金額が安くなってしまうので、いずれの共有者にとっても経済的なメリットは期待できません。そこで、競売によるのではなく、任意売却(「不動産の任意売却」を参照)という通常の売却方法で売り、その売却代金を分割するというやり方を選んだ方が、メリットは大きいでしょう。
しかし、裁判所から、代金分割によるべきだという「判決」が下されてしまうと、競売という手続きでしか売却できません。
そこで、共有物分割訴訟における判決に至る前段階の和解協議の中で、共有者全員でよく話し合い、任意売却で売ることに合意できるように努め、判決ではなく和解で訴訟を終了させられるよう行動することをおすすめします。