贈与による方法
次に、贈与という方法により、自らの財産を特定の人に渡すこともできます。贈与とは、他の人に対して、無償で自分の財産を譲り渡すことをいいます。
この贈与は法的には契約ですので、財産をあげたいと思う相手との間に、「私の財産をあげます」「ありがとう、もらいます」という意思の合致が必要になります。
贈与は、大きく分類すると生前贈与と死因贈与に分かれますが、生前に自分の財産をどうするか決めたいという場面では、このどちらも利用されます。
生前贈与
生前贈与とは、自分が生きている時に、他の人に対して、無償で財産を譲り渡すことをいいます。一般的に贈与というフレーズはこの生前贈与のことを指しますが、後述する死因贈与との対比で「生前」贈与と呼ばれます。
この生前贈与により、自分の不動産や車、お金などの財産を、自分が渡したい人に生前にあげることができます。
死因贈与
死因贈与とは、財産をあげる人が死亡した時点で、財産の所有者が贈与を受ける人に変わる贈与のことをいいます。わかりやすく言えば、例えば「私が死んだらその時にこの100万円をあげるよ」という契約をする贈与契約のことです。
贈与による場合のメリット
遺言・遺贈により財産の帰属を決める場合と比べて、贈与により財産を譲り渡すことには、次のようなメリットがあります。
①様式が厳格でない
上記の通り、贈与は契約ですので、財産をあげたいと思う人と財産をもらいたいと思う人の間で、「財産をあげます」「ありがとう、もらいます」という意思が合致すれば、それだけで成立します。意思の合致だけで成立するということは、もっと言ってしまえば、実は契約書すら必要ありません。
その点、遺言・遺贈による場合には、その様式に厳格な決まりがありますので、決められた様式に従っていなかった場合、それだけで遺言が無効になってしまうことがあります。
もっとも、いくら法的には契約書の必要ない贈与といえども、自分が亡くなった後に残された人たちがもめることがないように、きちんと契約書を作成しておくことを強くおすすめします。
②放棄されない
贈与については、生前贈与では「あげます」「ありがとう、もらいます」という契約が成立した瞬間に、死因贈与ではあげた人が亡くなった瞬間に、その財産がもらった人のものになります。財産をもらう人としても、それをもらうことを了承して贈与の契約をしているわけですから、それで不都合はないはずです。
しかし、遺言・遺贈による場合には、受け取る側としては受け取らずに放棄することが可能です。なぜなら、遺言の内容は、遺言を書いた人が亡くなるまで秘密にされていることが通常ですから、受け取る側としては遺言の中身については知りませんし、また、遺言で財産の帰属を指定している場合は、ある特定のプラス財産だけでなくマイナス財産まで受け取らなければならないように指定してある場合も多々あります。ですので、受け取る側が不測の不利益を被らなくてもいいように、受け取るも放棄するも自由になっているわけです。
そうであるとすれば、贈与の方が、契約が成立するならばより本人の意思に沿う結果になるとも言えます。