審判で裁判所はどのように判断するの?
審判になった場合、裁判所は、相続人の誰がどの遺産をもらうべきなのかを判断しますが、それをどのように判断するかは、具体的な事案における様々な事情によって変わってきます。代表的なものとして、次のような事情がある場合の判断について、説明します。
遺産の土地の上に既に家を立てている場合
まず、遺産の中に土地があり、故人が存命の時から、その土地上に相続人の1人が家を立てて住んでいた場合を考えてみます。
このような場合、この土地の上に家を立てている相続人としては、今後もこの土地を使用したいと思うのが通常ですし、他の相続人としても、もらった土地の上に他人の家が建っていても、その土地を利用しにくい状態になってしまいます。
そこで、基本的には、家を建てている相続人がこの土地をもらうべきだと判断されるのが通常です。
ただし、この土地をもらうと、その価格として、その家を建てている相続人の相続割合を超えてしまう場合には、代償分割により、その差額を他の相続人にお金で支払うことになります。
※代償分割については、「遺産の分割」の【遺産の4つの分割方法】を参照。
よって、家を建てている相続人にこのお金を支払う資力がないときは、この相続人はこの土地をもらうことができません。
誰も欲しがらない土地がある場合
また、誰も欲しがらない土地がある場合には、①この土地を共有にした上で、さらにこの土地を売却し、売れた代金を相続人みんなで分けるように命じられることがあります。これはつまり、換価分割という手続きをとるわけです。
また、②この土地を相続人全員の共有にするよう命じられることもあります。この場合は、共有分割をしているわけです。
※換価分割と共有分割については、「遺産の分割」の【遺産の4つの分割方法】を参照。
換価分割における任意売却と競売
①のように審判において換価分割を命じられる場合、その財産を売却する方法としては、任意売却と競売という2つの方法があります。
任意売却をするためには、相続人全員の同意が必要となりますが、話し合いで解決できないほどもめて審判までもつれてしまっているような場合には、なかなかハードルが高いです。
しかし、他方、競売になってしまうと、全員の同意は必要ありませんが、任意売却の場合と比べて、売却価格が7割ほどに落ちてしまいますので、相続人全員の取り分が減ってしまうことになります。
ですので、換価分割を行う場合には、できるかぎり相続人全員で協力して任意売却を行い、売買代金を分割するという方法を取れるように模索しましょう。
共有物の分割
また、②のように、共有分割によりその土地が相続人の共有とされた場合には、その共有状態を解消するため、その後に共有物の分割をする必要があります。
共有物を分割するための方法としては、次のものがあります。
現物分割
現物分割とは、その共有物を物としてそのまま2つに分けることをいいます。話し合いではなく裁判で共有物を分割する場合には、この現物分割が原則となります。
換価分割
換価分割とは、その共有物を売却し、その売却代金を分けることをいいます。
代償分割
代償分割とは、共有者の間で共有物を物としてそのまま分け合い、その上で自分の共有割合を超えた部分を受け取った人は、代わりに他の共有者へお金を支払って調整する分割方法をいいます。この代償分割を行うにあたっては、全面的価格賠償と呼ばれる、共有者の1人がその共有物を全部もらい、代わりに他の共有者へお金を払う方法が、判例により認められています。