離婚の概要と手続きの流れ
現在、日本の法制度においては4つの離婚の種類があり、それぞれ協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚という名前で呼ばれています。
これらの4つの離婚の形態は、それぞれメリットとデメリットがあるうえ、基本的な流れはおおよそ決まっています。
離婚手続きの大まかな流れ
では、4つの種類の離婚について、どのような流れで進んでいくのでしょうか。
①協議離婚
まず、最初に、夫婦間で離婚について話し合い、お互いに納得できるかを検討します。話し合いがまとまれば、離婚届を提出し、離婚が成立します。
②調停離婚
夫婦間での話し合いでは話がまとまらない場合、裁判所にて第三者を交えて話し合いをします。これを離婚調停といいます。この調停で話し合いがまとまれば、調停離婚が成立します。
③審判離婚
第三者を交えての話し合いでも話がまとまらなかった場合、裁判所が「離婚したほうがいいな」と判断し、離婚の審判を下すことがあります。この審判は、判決と同じ効果を持つので(ただし異議を言える)、これにより離婚が成立することを審判離婚といいます。
④裁判離婚
離婚調停がまとまらない場合や、離婚審判に異議が唱えられた場合、最後の手段として裁判で判断することになります。この裁判で離婚が成立することを裁判離婚といいます。
基本的には、このような流れを取ることになります(後述しますが、審判離婚はほとんど利用されていません)。ですので、「どうせ調停で話し合っても無駄だから手っ取り早くいきなり裁判離婚をしたい」ということはできません(調停前置主義といいます)。
この流れを図にすると、次のようになります。
話し合いによる離婚(協議離婚)
協議離婚は、夫婦間での話し合いだけで合意に至る離婚のことです。手続きとしては、離婚について夫婦間で合意した上で、離婚届を市区町村役場に提出することで、成立します。実際の離婚件数のうち、この協議離婚がおよそ90%弱を占めています。
協議離婚のメリット
協議離婚のメリットについては、次のとおりです。
①時間と手間がかからない
協議離婚は、夫婦間の合意と離婚届の提出によって成立しますので、第三者の介入がありません。ですので、夫婦で合意さえできればさほど時間はかかりませんし、また、離婚届の提出以外の手間もかからないため(ただ、トラブル防止のため、後述のように離婚協議書を作成し公正証書にするという手続きもすべきです)、最短距離で離婚に向かうことが可能です。
②離婚後も夫婦の関係がそこまで悪化しないことがある
あくまで話し合いで双方が納得して離婚することになりますので、離婚後の元夫婦仲がそこまで悪くならない場合もあります。
離婚時に子供がいる場合には、どうしても今後も連絡を取る必要があることも多いので、これは大きなメリットになります。
協議離婚のデメリット
デメリットとしては、次のものが挙げられます。
①話し合いにならない場合もある
夫婦だけで離婚の話をするわけですので、そもそも相手が聞く耳を持ってくれない場合もあります。また、DV被害があるような場合ですと、そもそも二人だけで離婚の話を切り出すのは危険です。このような場合には、協議自体ができませんので、弁護士に相談する方がベターです。
②後からトラブルが発生しやすい
離婚をするときには、子供の親権などの子供めぐる事項や、慰謝料や財産分与などのお金に関する事項など、決めなければならないことが数多くあります。
しかし、自分たちだけで話し合いをする場合、「とにかく早く離婚したい」という感情が先行してしまい、これらの事柄について十分に取り決めをしないまま離婚してしまい、後々トラブルになってしまうこともあります。このように取り決めがきちんとできていない場合や口約束だけで離婚協議書を作っていないような場合、本来ならば受け取れたはずのお金を受け取れないことも十分にあり得ます。
③公正証書の作成費用はかかる
上記②のように、ただ協議しただけでは、十分な取り決めができていなかったり、後から約束を反故にされたりと、将来的に不都合が生ずることもあります。そこで、協議で取り決めた内容について、離婚協議書を作成した上で、公証人役場で公正証書を作成することをおすすめします。
もっとも、公正証書を作成する場合は、その分の費用がかかってしまいます。それでも、保険としての意味合いでも、離婚協議書を必ず公正証書にして残すことが大切です。
調停離婚
調停離婚は、夫婦間での話し合いでは離婚への合意ができない場合に、裁判所で第三者を交えて話し合いをし、それにより合意をして離婚することをいいます。
夫と妻の双方が、実際に家庭裁判所まで行き、裁判所の一室で開かれる調停の場で、調停委員に間に入ってもらって話し合いをすることになります。
離婚全体の中における調停離婚の割合は、およそ10%ほどです。
調停離婚のメリット
①冷静な話し合いがしやすい
離婚調停の場合、調停委員という第三者が間に入って、双方の主張を聞いた上で、客観的な解決案を提示してくれます。夫婦だけでの話し合いですと、どうしても感情的になってしまいがちですが、第三者が入ってくれることで、比較的冷静に話し合いを行うことができます。
②手続き自体は比較的簡単
裁判手続きと比べると、調停の手続きは比較的簡単です。ですので、弁護士に依頼せずとも、ご自分で行うことも可能です(もっとも、財産分与等がある場合にはおすすめしません)。
調停離婚のデメリット
調停離婚のデメリットとしては、次のものがあります。
①時間と手間がかかる
離婚の調停は、協議離婚のようにすぐに話がまとまることはなく、どのような結果になろうと調停が3回ほど行われます。そして、それぞれの調停については、1ヶ月から1ヶ月半ほど間が空きますので、離婚調停の終了までにトータルで3ヶ月から半年ぐらいかかることが多いです(もっとかかる場合もあります)。
また、調停は平日のみ開かれるので、土日休みの仕事をしている場合、有休を取得するなどスケジュールを調整する必要があります。
②費用がかかりがち
調停の場合、自分でやろうと思えば弁護士に依頼せずに本人だけで行うことも可能です。そして、調停自体については、ほとんど費用はかかりません。
ただ、財産分与等がある場合には、どうしても専門的な知識がないと不利な内容で調停が成立してしまう場合があります。弁護士に依頼していれば、弁護士が調停の場に同行し主張すべきことをしっかり主張するので、有利な結果を得られやすいです。
もっとも、その場合には、どうしても弁護士への依頼費用がかかってしまいます。
審判離婚
審判離婚は、離婚調停が不調に終わった場合に、家庭裁判所の判断で離婚の効果を生じさせる審判を下し、それにより成立する離婚のことをいいます。
しかし、この審判離婚は、実際にはほとんど利用されていません。
なぜなら、この審判には不満がある当事者は異議を唱えることができますので、そうすると結局裁判にて離婚の可否を判断することになりますし(審判を下すだけ無駄となる)、他方、当事者が審判に異議を唱えない場合であれば、お互いに納得しているわけですから、そもそもその前の調停で離婚が成立している場合がほとんどかと思われます(審判を下すところまでたどり着かない)。
このように、離婚審判には実際にはあまり実益が見いだせないということが、その理由となります。
裁判離婚
離婚調停でも合意ができない場合、離婚訴訟を提起することになります。裁判は、協議や調停のような話し合いとは異なり、最終的に裁判所が強制力のある判決を示すことになるので、どのような結果であれ、必ず結論が出ることになります。また、後述の通り、どうしてもデメリットが目立つこともあり、離婚全体における裁判離婚の割合は、わずか数%しかありません。
裁判離婚のメリット
裁判離婚のメリットは、次の点にあります。
①必ず結果が出る
裁判である以上、協議や調停のように話し合いが決裂し何も決まらない可能性があるということはなく、必ずどちらかの言い分が認められることになります。
裁判離婚のデメリット
裁判離婚のデメリットは、次のとおりです。
①時間と手間がかかる
訴訟の提起から判決が出されるまで、1年〜2年ほどかかることが通常です。長いときは、もっとかかることもあります。
②法定離婚事由が必要
裁判離婚が認められるためには、法定離婚事由が必要となります。協議離婚や調停離婚の場合は、不要です。
③全面的に対立することになる
夫であれ妻であれ、いま離婚でもめている相手は、夫婦として今まで共に過ごしてきた人ですので、「敵対したいわけじゃなく、自分が望む条件さえ認められればそれでいい」という方が多いかと思います。しかし、話し合いとは違い裁判となる以上、全面的に相手と争うことになります。そうなってしまうと、今後も子供や養育費等のことで最低限の連絡が必要となる場合もあり得るにも関わらず、今後に遺恨を残し修復不能な関係になってしまうことが多いです。
④費用がかかる
協議や調停であれば弁護士に頼まなくても可能ですが、裁判となると、有利な結果を望む以上、どうしても専門家である弁護士に依頼せざるを得なくなります。となると、やはりそれ相応の費用がかかってきます。