刑事事件

身近な人が逮捕された場合

家族が逮捕されてしまった

身近な人が逮捕される場合、事前の通知などは行われず、何の前触れもなく突然逮捕されることがほとんどです。しかし、逮捕をする権限がある警察とはいえ、何の理由もなく国民を逮捕することはできません。逮捕をできる場合というのは、法律に明確に規定されていて、その厳しい条件に当てはまった場合のみ、逮捕が許されます。ですので、家族が逮捕されてしまったという場合は、客観的に見たらそれなりの理由があるはずです(もっとも、その理由が本当に真実かどうかは別の問題です)。
その逮捕には、次の3つの種類があります。

逮捕の種類

通常逮捕

逮捕は、基本的には警察が裁判所に逮捕状の発布を請求するところから始まります。そして、裁判所がそれを許可し、逮捕状が発布されることにより可能になります。あくまでこれが原則です。警察が過度にその権限を振るわないように、裁判所の審査が必要だとして歯止めをかけているわけです。
そして、その逮捕状が発布されるためには、①犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由と、②逮捕の必要性がなければならないとされています。
ですので、家族が通常逮捕されてしまった場合は、①犯罪に関わっていると疑うだけの相当な理由と②逮捕の必要性があると、裁判所が判断したことになります。

現行犯逮捕

次に、現行犯逮捕というものがあります。現行犯逮捕は、まさにいま目の前で犯罪を行っている等、犯罪に関わったのが明らかな場合には、例外的に逮捕状なしで逮捕ができるというものです。このような場合には、裁判所の審査を経なくても上記①②の条件を満たしていることが明らかだという趣旨です。

緊急逮捕

3つめに、緊急逮捕というものがあります。これは、一定の重大犯罪の場合にのみ、通常逮捕よりもさらに厳しい条件を満たす場合には、例外的に事後的な逮捕状の請求でも逮捕できるとするものです。こちらは一般的にはあまり馴染みのないものですので、普段から意識しておく必要はありません。

逮捕されるとどうなるのか

万が一、家族が逮捕されてしまうと、本人はもちろんのこと、家族にも様々な影響が出てきます。

身柄を拘束される

逮捕は、被疑者の身体を拘束するものですので、原則としてこの時点から警察署の留置場に拘留されることになります。そうなってしまうと、当然職場や学校には行けませんし、家に帰ることもできません。
この身体拘束がいつまで続くのかは、逮捕の後に勾留請求がされるのか、また、再勾留の請求がされるのか、ならびに、別罪状での再逮捕の可能性があるのかなど、事件の内容によって大きく変わってきます。

取り調べが始まる

逮捕は、逃亡・証拠の隠滅を防止することを目的として行われますが、実際には被疑者の取り調べが行われます。警察としては、送検までの時間が48時間しかありませんので、なんとかその時間内に被疑者から自白を取りたいと考えます。そのため、どうしても行き過ぎた取り調べが行われる可能性が出てきます。

家族に会うことができなくなる場合がある

逮捕されると、家族の方は本人に自由に会うことができません。逮捕されている本人と面会することを「接見」といいますが、弁護士以外との接見には多くの制限がかけられています。警察署で接見できる曜日・時間帯・一回の接見時間・回数など、非常に厳しい制約があります。実際には、着替えを届け、本人の顔を見られる程度の短時間のものというイメージです。
また、そもそも「接見禁止決定」が付される場合もあります。この場合は、そもそも弁護士以外との接見は全面的に禁止されてしまうので、家族が逮捕された本人の様子を知る術はなくなってしまいます(手紙のやり取り等もできません)。

家族が逮捕されてしまった場合どうすればいいのか

家族への逮捕は、通常は突然行われるものですから、どうしてもパニックになって何をしていいかわからなくなってしまいます。しかし、刑事事件の流れにあるように、逮捕後の手続きについては、時間が厳密に決まっていますので、のんびりしていては手続きがどんどん先へ進んでいってしまいます。少しでも本人にとって不利にならないように、家族の方々が冷静になって、スピーディーに行動することが最も重要になります。

まずは現状を把握することから

まず、できる範囲で現在どのような状況にあるのかを把握しましょう。どのような事件で、何で逮捕されてしまったのかを警察に問い合わせて下さい。警察が具体的に教えてくれない場合も多いですが、少しでも情報を貰えれば冷静になれるきっかけにもなります。

弁護士に相談へ

次に、直ちに弁護士に相談しましょう。逮捕をされてしまった場合、その後の手続や捜査は、捜査機関である検察・警察のペースで進められていきます。検察・警察は刑事事件のプロですので、彼らを相手に専門家の力なしにベストな手を打ち続けることは、ほぼ不可能と言えます。
繰り返しになりますが、逮捕後の手続きの時間が厳格に法律で決まっている以上、最重要ポイントは「1秒でも早く弁護士へ相談」です。

弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼した場合、本人やご家族にとって有利に働く点が多くなります。

自由に接見できる

逮捕された後も、弁護士だけは曜日や時間帯、接見の時間の制約なく、警察官の立ち会いもなく自由に接見することができます。接見禁止決定が出されていても、全く問題ありません。ですので、逮捕直後から接見を行い、事件の詳細や本人の主張を聞き、事件全体を正確に把握することができます。
また、今回の事件では今後の捜査はどう行われそうか、それに対してどう対応すべきか、という戦略を伝え、本人にとって不当に不利にならないように備えることができます。
さらに、本人の健康状態を確認し、家族の人への伝言を受けたり、反対に家族の人の伝言を本人に伝えたりと、家族の方と本人を繋げることができるようになります。

早期の身柄の釈放を目指した行動がとれる

弁護士に正式に依頼をすると、逮捕された方が少しでも早く釈放されるように動きます。
勾留決定に対する準抗告や、接見禁止決定に対する準公告などの不服を申し立てることもできます。
また、次のような示談交渉の成否も釈放に大きな影響を及ぼします。

被害者との示談交渉を任せられる

被害者がいる事件の場合には、早期釈放には被害者の方との示談が重要な鍵を握ります。示談が成立しているかどうかで、検察官の心証も大きく変わるため、起訴・不起訴の判断に大きな影響を及ぼすことも多いです。
しかし、加害者の家族の方が示談をしようとしても、被害者の方は全く聞く耳すら持ってくれない場合が非常に多いです。これは、被害者の方の感情を考えれば当然のことですし、被害者感情を逆なでしてしまうので避けるべきです。
もっとも、弁護士であれば示談の経験が豊富ですので、被害者の方の感情に配慮した上で、冷静な話し合いをすることが期待できます。その結果、家族の方が自らやる場合よりも、示談交渉がまとまる可能性も高くなりますし、示談書の作成などの手続きを全て任せられます。

本人の心強い味方になってくれる

本人の心強い味方になってくれるという点も、弁護士に依頼する上で非常に大切なことです。むしろ、この点が最も重要なことかもしれません。
特に逮捕者が「自分はやっていない」と否認している場合、捜査機関から非常に厳しい取り調べが行われます。昨今はそれが問題視され、取り調べの可視化が取り沙汰されていますが、それでもなお、自白を取るための行き過ぎた取り調べは頻繁に行われているのが現状です。
逮捕され拘留されている状況では、逮捕されてしまった本人はとても孤独を感じ、精神的に参ってしまいます。そのような状況下で、厳しい取り調べが行われれば、「真実は裁判で言えばいい。」と考え、捜査機関の筋書き通りにウソの自白をしてしまうこともあり得ます。そのような強引な取り調べに屈して不利な供述をしてしまうことがないように、「弁護士という味方がついている。家族もみんな待っているから頑張ろう。」と気持ちを強く持ってもらえるよう、精神的な支えになれるように弁護士は努めます。
そのために、弁護士としては、とにかく何度も何度も繰り返し接見に行くことが重要となりますし、そういう弁護士を選ぶことも重要なポイントです。