姻族関係の終了届
今回は、姻族関係終了届について説明したいと思います。
まず、そもそも姻族関係というのは,婚姻(結婚)をきっかけとして生じる本人とその配偶者の血族(親、兄弟姉妹など)との関係をいいます。
例えば、AさんがBさんと結婚したとする場合、Aさんと、Bさんの両親や兄弟などとの関係を姻族関係といいます。また、そのBさんの親や兄弟などの立場からすると、Aさんと姻族関係にあることになります。他方、Bさんの親や兄弟などの立場から、Aさんの親や兄弟などは姻族関係にはありません。あくまでも、配偶者の血族及び血族の配偶者の関係を姻族関係といいます。
そして、姻族関係のうち3親等内の姻族関係にあるものについては、親族とされ(民法725条)、民法上様々な権利義務関係が与えられることになります。例えば、後見等に関わる審判の請求と取消しの請求ができるとされており、親族間の扶助義務が課され(民法730条)、扶養義務が課されることもあります(「特別の事情」がある場合。民法877条2項)。その他にも様々なものがあります。
この姻族関係は、配偶者と離婚した場合には、婚姻関係の終了とともに自動的に終了します(民法728条1項)。
しかし、配偶者が亡くなった場合には、婚姻関係は終了しますが、配偶者の血族との姻戚関係は当然には終了することなく、配偶者の死亡後もそのまま継続されます(民法728条2項)。
他方、配偶者の亡くなった後に配偶者の血族との姻族関係を終了させたいと望む場合には、その旨の意思を表示することによって解消することができます。ここで出てくるのが「姻族関係終了届」です。本籍地もしくは住居地の市区町村に「姻族関係終了届」を提出することで姻族関係を終了させる旨の意思を表示したことになります(提出するだけです。届出日に姻族関係は終了します)。姻族関係を解消するかどうかは、自由に決めることができ、配偶者の血族の了解はいりません。家庭裁判所への申立ても不要です。
この「姻族関係終了届」は、配偶者の死亡届が出された後であれば、いつでも提出でき、期限はありません。
姻族関係が終了すれば、「特別の事情」が認められる場合でも、死亡した配偶者の血族の扶養義務を負うこともありません。
しかしながら、姻族関係終了の意思表示と氏(名字)とは何の関係もありませんので、姻族関係を終了させても氏はそのままにしておくこともできますし(もちろん,姻族関係を終了させた上で氏を婚姻前のものに戻すこともできます)、姻族関係を終了させずに氏を戻すこともできます。氏を戻したい場合には、「復氏届」というものを提出することになります。
なお、姻族関係終了届を提出することにより姻族関係を解消しても、亡くなった配偶者の相続について影響を与えるものではないため、遺産を相続する権利を失うことはありません。
以上が姻族関係終了届についての説明となります。姻族関係についてお悩みの方は当事務所にご相談下さい。