労働者性について

労働者性について

今回は、いわゆる「一人親方」として個人で請負形式で仕事をしている人が、果たして労働者として認められるのかといった点について、ご説明します。

労働基準法1条は「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たさなければならない」と規定する等、「労働者」を保護の対象としています。労働基準法以外にも、最低賃金法や労災法など労働関係に関する様々な法令が「労働者」を対象として定められています。

では、それらの労働関係に関する諸法令が適用される「労働者」とはどのような方をいうのでしょうか。この点について、労働基準法9条は「労働者」を「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。

このような「使用される者で、賃金を支払われる者」といえば、サラリーマンなどのように、会社と「雇用契約」を結んでいる方がまずは思いつくかと思われますが、「請負契約」をはじめとした「雇用契約」以外を結んで仕事をしている方は「労働者」に含まれないのでしょうか。

最高裁判所(平成8年11月28日判決)は、車の持ち込み運転手の労働者性が問題となった事件で、労働者性を判断するにあたり、①具体的な指揮監督の有無、②時間的、場所的な拘束の程度、③報酬の支払い方法や公租公課の負担といった事情から、労働者性の有無を判断しています。

その後、最高裁は、研修医について、大学病院における臨床研修のプログラムが研修医が医療行為等に従事することを予定していること、大学が定めた時間及び場所において(②の要素)指導医の指示にしたがって大学が大学病院の患者に提供する医療行為等に従事していたこと(①の要素)、大学病院が奨学金として金員を支払った上、給与等に当たるものとして源泉徴収をしていたこと(③の要素)という具体的な事実から、労働基準法及び最低賃金法上の労働者に該当するものとして、それらの法令の適用を認めています(最判平成17年6月3日)。

このように、具体的な契約の名目が請負契約等、雇用契約以外のものであっても、前記①から③の要素に照らして労働者性が認められた場合には、「労働者」として労働基準法をはじめとした労働関係法令の適用があることとなります。

一人親方の場合でも、その者が親会社だけの仕事をしているのか、親会社の完全な指揮監督に従っているのか(裁量が許されていないのか)、親会社の機器・設備・備品等を使用して仕事をしているのかどうかとなどといった点が判断基準になるかと思います。