手形を盗まれたり紛失した

手形を盗まれたり紛失した

たとえば売掛金の支払いとして、売掛先からもらった手形を盗まれたり、紛失した場合どのように対処すればよいのかを解説します。

1. もらった手形を盗まれたり、紛失するという事故はよくあります。手形を盗まれたり、紛失しても、それによって直ちに手形上の権利を喪失するわけではありません。しかし、盗難、紛失した手形が、その手形が盗まれたり、紛失した手形であることを知らない第三者(善意の第三者)に渡れば、あなたは手形上の権利を失ってしまうことになります。また、善意の第三者から支払を求めれれば、振出人は支払わなければなりません。
そのため、手形を紛失するなどの事故が発生したら、急いで次の手続をしてください。

まず銀行へ連絡する

すぐに、銀行へ、紛失した、あるいは盗まれたことを連絡し、その手形の支払のストップを依頼します。受け取った手形が事故にあった場合は、まず、手形振出人に連絡し、振出人から支払銀行に事故届を出してもらい、その手形の支払を差し止めてくれるよう依頼します。

警察に被害届を出す

銀行に連絡するとともに、警察に手形の紛失届あるいは盗難届を出します。何よりも早く紛失手形を発見し、また犯人逮捕をしてもらって手形が他人に渡るのを防ぐためです。また、手形を紛失したことあるいは盗難に遭ったことの資料となりますので、その意味でも被害届を出すことが重要です。

2. その後、裁判所に公示催告の申立をし、除権判決を出してもらうよう申請します。
これは、なくしたり、盗まれた手形を無効にする手続です。公示催告の申立をし、除権判決を出してもらうと、その手形は無効になり、なくした人はその判決により手形金を請求できます。

公示催告の申立

公示催告とは、裁判所が「これこれの手形を所持している人は、○月○日までに裁判所に届け出なさい。もし届け出ないと、その手形は無効になります。」と公示することです。申立は、手形の支払地を管轄する簡易裁判所に行います。その際に、銀行の手形の交付証明書、振出人の振出証明書、警察の紛失届出証明書や盗難証明書などを添付しなければなりません。裁判所は、申立に理由があると判断すれば、申立人の氏名および手形の内容とともに、その手形の所持人は期日までに裁判所に届け出て手形を提出すること、もし届出がないときは手形の無効を宣言することがあることを、官報に掲載するとともに、裁判所の掲示板に掲示します。官報への記載日と公示催告日の間は少なくとも6ヵ月の間をおくことになっています。

公示催告期間内に手形の所持人から届出があったとき

公示催告期間内に手形の所持人から届出があったときは、届け出た人と申立人との間で、いずれが法律上正当な手形の権利者かを裁判で争うことになります。

除権判決

公示催告の期間中に、手形を持っている人から届出がないときは、申立により除権判決を受けることができます。この判決により手形は無効となり、その旨が官報に掲載されます。公示催告の申立から除権判決をもらうまで8ヵ月ぐらいかかります。
この除権判決を受けると、その手形は無効になり、ただの紙切れになります。除権判決の後で、誰かがその手形を事情を知らずに入手しても、たとえ善意でも手形上の権利を行使することはできません。また、申立人は、紛失したり、盗まれた手形にかわって、除権判決の判決正本によって、手形金を振出人などに請求できることになります。

手形を紛失・盗難しても、手形金の請求ができなくなるものではなく、以上のような手続きを踏めば、手形金の請求をすることができますので、ご相談ください。