賃料の増額ができる条件は?
不動産のオーナーが貸している不動産の賃料の増額をしたいと考えた場合、借り手である賃借人がその新たな賃料の金額に納得するのであれば、どのようにでも賃料を増額し、その金額を変更することができます。
しかし、いざ賃料を増額しようとしても、借り手としては従来の金額だからこそ借りていて、それ以上の金額であれば借りたくないと思っている場合も多いので、賃料の交渉は一筋縄ではいかず、調停や訴訟にまで発展してしまうこともあります。
特に訴訟においては、客観的に賃料を増額すべきだと認められるような事情がなければ、賃料の増額は認められません。そこで、訴訟手続等において、賃料を増額すべきだと認められるためには、以下の条件をクリアする必要があります。
事情の変更があること
賃料を増額するためには、従来の賃料額が決められた当時から現在に至るまでに、事情が変更したことが必要になります。では、どのようなものがここでいう事情の変更に該当するのかについては、法律が次のものを例示しています。
もっとも、これらはあくまで例示なので、この中に含まれなくても、事情の変更があるといえる場合もあります。そうはいっても、ここに例示されたもののように、基本的には直接的・間接的に社会的な背景や環境自体が変わっている場合に、事情が変更したと認められることが通常です。
そのため、オーナーが、自分の資産状況の悪化に困窮し、より多くの賃料収入を得たくなったからという個人的な事情のみで賃料の増額請求をしても、ここでいう事情の変更には当てはまらないため、そのような請求は訴訟手続では認められません。
事情の変更により、従来の賃料額が不相当となったこと
次に、上記の事情の変更によって、従来の賃料額が不相当(安すぎる)となったことが必要です。
この条件をクリアしているか否かを判断する方法として、賃料の増額を請求した時点での相当な賃料額と、従来の賃料額とを比較することがよく行われます。
ただ、賃料額の増額が認められるためには、従来の賃料が不相当となったことが必要ですので、たとえ相当な賃料額との間に差があったとしても、その差が小さい場合には賃料の増額が認められないことが通常です。
事情の変更によって賃料額に差ができていなければダメ
また、仮に、この相当な賃料額と従来の賃料額の差が大きかったとしても、上記の「事情の変更」によってこの差ができたといえなければ、訴訟手続で賃料増額請求は認められません。
そのため、事情の変更以外の理由で相場の賃料額と従来の賃料額との差が生じていた場合(例えば、賃貸人と賃借人が親戚関係であり、賃貸借契約をした当初から相場の賃料額よりもかなり安い賃料額にしていた場合)には、賃料増額の請求をしても増額自体認められないことが通常です。
賃貸借契約に「(一定期間は)賃料を増減させない」という特約条項がないこと
賃貸借契約を締結した際に、一定期間は賃料を増減させないという条項があった場合、法律の規定よりもこの契約上の条項が優先し、その期間はたとえ上記の「事情の変更」があっても賃料を増額させることができません。
そのため、賃貸借契約の内容として、請求する時点での賃料増減を制限する条項がないことが、賃料増額請求が認められるための条件となります。
【知っておきたい!】
なお、この賃料の増減を制限する条項は、最長でも賃貸借期間の満了までなので、たとえこの条項があったとしても、契約期間満了による契約更新の時に賃料を増額させることは可能です。