契約書を作成しておく意味
では、なぜ企業活動においてサービスや商品のやり取りが行われる際には、契約書を作成しなければならないのでしょうか。
この点、そもそも、契約をするだけならば、実は契約書を作成する必要はありません。契約書がなくても、契約の当事者間で、サービスや商品の提供についての合意さえあれば、契約自体はその口約束だけで成立するからです。
例えば、コンビニでペットボトルのお茶を買う場合、そのペットボトルのお茶についての売買契約を結んでいることになるのですが、いちいち契約書を作ることはしませんよね。それでも、このコンビニでの売買契約は、もちろん有効です。
しかし、会社が他社にサービスや商品を提供したり提供されたりする場合には、このコンビニのケースとは異なり、必ず契約書を作成しておくべきです。それは、以下のような理由によります。
【知っておきたい!】 例外的に書面が必要な契約類型もある
契約をするにあたっては、その契約の成立だけを考えるのであれば、原則として契約書は必要ありません。
ただ、様々な契約の種類の中には、書面を交わすことが必須とされている契約類型もあります。
例えば、保証契約がこれにあたります。
後々のトラブル防止のため
他社との間で契約を締結した場合には、自社も他社も、その契約の内容に拘束されます。つまり、どちらの企業もその契約のとおりに行動しなければならないわけです。
しかし、契約を結んだにも関わらず、相手の企業がその契約の内容通りに動いてくれず、後々トラブルになってしまうことがあります。
その場合、自社としては、相手の企業に対して、「契約通りにしなさい」と法律に基づいて請求することになりますが、この場合には、契約の内容がどのようになっていたのかを証明する必要があります。そこで、この契約内容を証明するために、契約書が必要になるわけです。
特約を定めるため
契約において、法律の中で任意規定と呼ばれる条文については、当事者間での合意さえあれば、法律の定めとは異なる取り決めをすることができます。このように合意で定めた取り決めを特約といいます。
例えば、民法は、お金を貸した場合の利息について、年3%としています(2020年4月現在)。しかし、消費者金融でお金を借りた場合の利息については、もっと高いことが通常です。これは、この法定利息を3%としている民法の規定が任意規定であって、お金を貸し借りする際の契約書に記載した特約によって、この利息を変更しているからです。
契約において、任意規定についてこのような特約がある場合には、法律の規定よりも契約の内容が優先されます。そして、この特約は、当事者の合意によって法律の規定を例外的に覆すわけですから、どのような特別な合意をしたのかを契約書に書かなければなりません。
そこで、きちんと契約書を作成し、その特約についても契約書の中に明記しておく必要があるわけです。