第三者からの情報取得手続き
1 民事執行法の改正
今年の5月10日に、民事執行法の改正案が可決成立し、5月17日に公布されました。この改正民事執行法は公布の日から1年以内に施行される予定となっております。
今回は、この改正民事執行法で新たに設けられた「第三者からの情報取得手続」について説明したいと思います。
2 「第三者からの情報取得手続」新設の背景
これまで、金銭債権を有しており裁判で判決を得ても、相手方が任意に支払いをしてくれず、また、相手方の勤務先や預金口座等もわからないために財産の差し押えもできず、債権を回収できないことが多くみられました。
また、離婚するにあたって養育費を決めて公正証書を作成したり、調停手続において養育費を定めたりしても、その後支払いがなくなり、勤務先などもわからなくなって強制執行することもできず債権を回収できないということが社会問題となっています。
このような事態を是正・改善しようと今回の民事執行法の改正がなされ、前述の「第三者からの情報取得手続」が新設されました。
3 「第三者からの情報取得手続」の内容
具体的には、相手方の預貯金口座に関する情報の取得手続、相手方の勤務先に関する情報の取得手続等があります。
(1)預貯金口座に関する情報取得手続き
まず、相手方の預貯金口座に関する情報取得手続については、金銭を支払う内容の判決や、養育費を支払う内容の調停調書などがあるにもかかわらず、相手方が支払をしないような場合には、第三者からの情報取得手続を利用し、裁判所から銀行に対して、その相手方が保有する口座の情報を照会してもらうことができるようになりました。
但し、債権者において、照会先となる金融機関を特定しなければなりません。
この手続によって相手方の預貯金口座の情報(支店名など)が入手できれば、その口座にかかる預貯金債権を差し押さえることによって、金銭債権の回収を行うことができることになります。
これまでは、弁護士会を通じて行う弁護士法23条の2の照会によって情報収集を行ってきましたが、回答を拒否する金融機関や手続に煩雑な点があったりした中で、今回の預貯金口座に関する情報手続の実効性には期待を持てます。
(2)勤務先に関する情報の取得手続き
また、相手方の勤務先に関する情報の取得手続については、裁判所を通じて、給与所得者の勤務先の情報を保有する市町村や日本年金機構等に照会をすることにより情報を取得することができます。
ただし、この手続を利用するには、その前提として財産開示手続の申立てを行う必要があります。
この手続は、簡単に説明しますと、裁判所に債務者を呼び出して、勤務先や預金口座等に関する質問を行い、財産状況を確認する手続きです。
そして、この手続をとっても、勤務先などに関する情報を取得できなかったときに、第三者からの情報開示手続を行うことができます。
また、この手続をとれる債権者は、養育費の債権や婚姻費用の債権に限定されています。
これまで相手方の勤務先を把握することが困難であった中で、今回の相手方の勤務先に関する情報の取得手続の実効性には期待を持てます。
4 まとめ
今回は、相手方の預金口座を調査する方法と、勤務先を調査する方法を紹介しましたが、今回の改正民事執行法は他にも新設された点や、従来の制度を改良した点があります。
債権の回収等でお困りの方は、当事務所へご相談ください。