免責期間内の自殺と生命保険金について
生命保険の約款には、加入してから一定期間内の自殺について死亡保険金を払わないと定めてあるのが通例です。その期間を「免責期間」と言いますが、この期間は、かつては1年や2年であることが大半でしたが、最近は「3年」となっているのが主流であるようです。
したがいまして、この免責期間内に被保険者が自殺によって死亡した場合には、この約款の規定によって保険金の支払いが拒絶されることがあります。
これは、そもそも自殺という死は被保険者自らがコントロールすることができるものですので偶然の出来事に対処するという保険の趣旨に適合しないということ、自殺による死亡の場合にも保険金を支払うことになれば保険金目当ての自殺を助長することになるなど保険の悪用防止のために設けられているものです。
このような趣旨からしますと、生命保険契約の約款の「自殺」とは、すべての自殺を意味するところではなく、あくまでも本人の自由な意思に基づく自殺を意味すると考えられます。
したがいまして、自殺がこのような免責規定が設けられた趣旨に反しないような場合-すなわち被保険者の自由意思に基づく自殺ではないような場合には、保険会社が死亡保険金を支払わないという根拠が失われることになります。
たとえば、この免責期間内に、被保険者が長時間労働などの過労が原因で自殺に追い込まれたような場合には、被保険者が自らの死をコントロールできなかった可能性があり、また、保険制度を悪用したということもありません。
最近、過労やパワハラなどが原因でうつ病などの精神障害などに罹り自殺に至ったようなケースが増えておりますが、このようなケースの場合には、その被保険者が正常な判断能力を失っていると認められるケースもあり、そのような自殺の場合には、免責期間内であっても、被保険者の自由意思による自殺ではないからという理由で保険金が支払われる場合があるのです。
このような自殺の場合に死亡保険金請求が認められるか否かは、最終的には個々のケースにおいて、被保険者の生活状況、生活環境、職場環境、就労状況、精神状態、治療歴、経済状況などから自殺の原因ないし動機を解明し、その自殺が本人の自由意思に基づくものであったのかどうかを判断することになります。
免責期間内の自殺だから死亡保険金は支払ってもらえなくても仕方ないと決めつけることなく、一度ご相談ください。