有責配偶者からの離婚請求
旦那さん(又は奥さん)が不貞行為をした場合、不貞行為をした旦那さんの側から離婚を請求することはできるのでしょうか。
不貞行為によって婚姻関係が完全に破綻してしまった場合、そのような破綻について専ら責任のある配偶者を有責配偶者といいます。
このような有責配偶者からの離婚の請求について、過去の判例では、
① 夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶか否か
② 夫婦間に未成熟の子が存在するか否か
③ 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的にきわめて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められるか否か
といった諸事情を総合的に考慮して、当該請求が信義誠実の原則に反するといえないときには、当該請求が認められるとしています。
近時の裁判例では、同居期間が約2年3か月、別居期間が約12年1か月、14歳の未成熟子が存在している事案において、妻が医師として働いていることや夫が離婚給付として500万円支払うと述べていることを考慮しても、有責配偶者である夫が自らの責任を顧みることなく、妻の責任を主張して離婚を求め続けていることや、妻が夫との関係の修復を気長に待っていると見ることもできること等の事情か有責配偶者である夫からの離婚請求を認めなかったものがあります。
もっとも、婚姻から別居までの期間が約7年、別居期間が約1年半、6歳と4歳の未成熟子が存在している事案において、有責配偶者である妻からの離婚請求を裁判所は認めました。そこでは、婚姻関係が破綻した責任の一端が夫にもあること、
妻が働きながら子供達を養育看護していく覚悟であり、その養育看護等の状況に特に問題もないことから、離婚を認めたとしても未成年者の福祉がことさら害されることもないこと、離婚を認めても夫が酷な状態におかれるわけでもないことなどの事情が考慮されました。
このように有責配偶者からの離婚請求が認められるか否かは、前記の3つの要素をもとに判断されますが、具体的な事情によって結論が大きく異なりますので、万一離婚が問題となった場合には、当事務所までご相談ください。