訴え提起前の和解(いわゆる即決和解)について

訴え提起前の和解(いわゆる即決和解)について

友人にお金を貸していたところ、返済日が過ぎたのに返してもらえなかったため、その友人と話合いをして新たに返済日を決めたものの返済が無かった場合 や、ある人に建物を賃貸していたところ、賃料の不払いが続いたため、契約を解除し、その後話合いをして明渡の日を決めたにも拘わらず、結局明渡しがなされ なかった場合、あらかじめ新たな返済日や明渡日などを記載した合意書などを取り交していたとしても、強制的にその友人の財産を差し押さえたり、建物の明渡 しを実行したりすることはできません。このような場合には、裁判を起こして、金銭の支払いや建物の明渡しを命ずる判決をもらって、強制執行手続をとること になります。

しかし、返済日などの支払い方法や明渡日などについて、当事者間で話合いができているのであれば、その内容を記載した公正証書を作成しておくか、訴え提 起前の和解(即決和解)という手続をとって話し合った内容の和解を成立させておけば、決められた日に支払いをしなかったり、明渡しをしなかったりした場合 に、強制的に財産を差し押さえたり、明渡しを実行したりすることができます。

なお、公正証書は、金銭の支払などに関してのみ強制力が認められているため、建物明渡しに関する合意について公正証書を作成していても、それによって強制的に明渡しを実行することはできませんので、この点についてはご注意下さい。

そこで、今回は、訴え提起前の和解(即決和解)手続について説明したいと思います。

訴え提起前の和解とは、裁判所における和解のひとつで、民事上(財産上)の争いのある当事者が、訴訟等によるまでもなく双方の合意による解決の見込み がある場合に、判決を求める訴訟を提起する前に、裁判所に和解の申立てをし、和解を成立させて紛争を解決する手続です。

手続の流れとしては、まず、当事者間において事前に話し合い、和解条項案(合意の内容をまとめたもの)を作成します。

その後、簡易裁判所に対して申立をします。申立を行う裁判所については、争いのある相手方の住所を管轄する簡易裁判所に対して行うのが原則ですが、当事 者双方の合意があれば、他の場所にある簡易裁判所に申し立てることもできます。また、申立については、法律上、書面または口頭でできるとされていますが、 実際は書面で行うこととなります。そして、申立書に記載すべきことは、請求の趣旨(求める和解の内容を記載します。これについては、上記の和解条項案を添 付することとなります。)、請求の原因、及び、争いの実情です(請求の原因、争いの実情については、紛争の原因や経緯等を記載することになります)。

その後、裁判所において、提出された申立書の審査が行われ、書類の追完や和解条項の修正が指示されることがあります。それらが完了すると、和解期日(和解をする日)の調整が行われ(希望日などが聞かれます)、和解期日が指定されます。

和解期日が決まると、和解条項(修正があれば修正されたもの)と期日呼出状(和解期日に出頭するようにと記載されたもの)が共に相手方に送付されます。

そして、和解期日当日、当事者双方が出席して、和解条項について合意し、かつ、裁判所が相当と認めた場合に和解が成立し、和解調書(裁判所が作成する和解の内容が記載された書類)が作成されることになります。

この和解調書があれば、相手方が和解調書に記載された約束(例えば、建物の明渡し)を守らなかった場合であっても、強制執行手続により、その約束を実現させることができます(例えば、建物の明渡しを実行することができます)。

以上のとおり、これまで訴え提起前の和解手続について説明してきましたが、もっと詳しく手続を知りたいという方、あるいは、冒頭の事例に類似するよう な問題を抱え、ちゃんと貸金を返してもらえるか、本当に建物明渡してもらえるか心配しているという方、さらには、裁判所へ提出する書面の書き方などでお困 りの方は、是非一度当事務所までご連絡ください。