少額訴訟手続について

少額訴訟手続について

知人に中古のバイクを50万円で売ったのに、支払日が経過し、代金の支払を求めても払ってもらえない、あるいは、友人に30万円を貸したのに、返済日が経過して返済を求めても返してもらえないなど、お金の支払いを求めても相手がそれに応じない場合には、弁護士に依頼して、内容証明郵便の送付や裁判を提起して支払を求めることが考えられますが、弁護士費用等のことを考えて、弁護士に依頼するのをためらう人もいると思います。

そこで、今回は、法律の専門家ではない方が、それほど費用をかけることなく、また、簡易迅速に紛争を解決することができる少額訴訟手続について説明したいと思います。

少額訴訟手続は、一般市民が抱える比較的少額の紛争を、請求する金額に見合った経済的な負担で、しかも、簡単、速やかに解決することを目的として設けられた制度です。

具体的な手続の内容については、まず、60万円以下の金銭の支払を求める場合に限って利用できます。そのため、建物の明渡しや、物の引渡しを求めるためにこの制度を利用することはできませんし、60万円を超える請求の場合も利用できません。

また、この手続を利用するためには、簡易裁判所に訴えを提起することになりますが、同じ簡易裁判所においては、1月から12月までの1年間に10回までしか利用できないこととされています。

さらに、この手続においては、裁判所は、当事者双方の言い分を聴いたり、証拠を調べたりして、原則として1回の期日で審理を完了しなければならないとされており、また、審理完了直後に判決(裁判所による判断のことをいいます)を出さなければならないとされています。このように手続が迅速に進められることもあり、当事者双方は、審理が行われる日(期日といいます)までに、あるいは、期日において、全ての主張や証拠を提出しなければならないとされています。そこで、訴えを起こす人(原告といいます)は、訴状(訴えを起こす際に、裁判所に提出する自分の主張を記載した書類)に記載したこと以外に主張したいことがあれば、期日までに全ての主張を裁判所に説明できるように準備しておく必要がありますし、調べて欲しい証拠があれば、期日までに全ての証拠を提出できるように準備しておく必要があります。これは、訴えられた人(被告といいます)も同様です。

なお、証拠に関しては、期日に法廷においてすぐに調べることができる証拠に限って調べることができるとされているため、自らの主張を裏付けると考えられる書類等があれば、期日にその書類等を持って行く必要があります。また、自らの主張を証明してくれると考えられる人(証人と言います)がいれば、期日に、その人に裁判所へ来てもらえるようにしておく必要があります。例外的に、裁判所が相当と認めるときは、電話を用いて証人から話を聞くこともあります。

次に、判決について、裁判所は、審理の結果、原告の主張・請求を認める判決をする場合であっても、被告の経済状態やその他の事情を考えて、必要があると判断したときは、被告に対し、判決言い渡しの日から3年以内の範囲で支払の猶予を認めたり、分割して支払うことを認めたりすることがあります。

また、判決に対して不服がある人は、判決書又は判決の内容を記載した調書を受け取った日から2週間以内に、判決を出した簡易裁判所に対して不服(異議)を申し立てることができます。この異議があったときは、裁判所は、通常の手続により引き続き審理を行って判決をしますが、この判決に対しては控訴(地方裁判所に対する不服申立て)をすることができません。

ところで、少額訴訟手続は、原告の一方的な意思により選択されて提起されるものであるため、この手続を望まない被告に、通常の手続での審理を求める旨の申出をすることが認められています。ただし、最初の期日で自分の言い分を主張したあとには申出をすることはできませんし、最初の期日で自分の言い分を主張しなかった場合や、最初の期日を欠席した場合においては、その期日が終了した後は、申出ができなくなるので注意が必要です。

以上のとおり、これまで少額訴訟手続について説明してきましたが、もっと詳しく手続を知りたいという方、あるいは、抱えている紛争が少額訴訟手続での解決に適しているどうかを知りたいという方、さらには、訴状などの裁判所へ提出する書面の書き方などでお困りの方は、是非一度当事務所までご連絡ください。