時効の中断
前回は、さまざまな請求権の消滅時効の期間や、時効の援用について説明しましたが、今回は時効の中断について説明します。
時効の中断とは、時効期間が進行しているときに、一定の事由があるとその進行が中断され、それまでに経過した時効期間の効力が消滅することを言います(なお、時効期間は中断時点から再び進行します)。
例えば、建物賃貸借契約などの賃料債権(消滅時効期間5年)についていえば、その債権について請求が可能となったときから3年が経過したところで、一 定の事由が発生した場合、その時点で時効期間の進行は中断するので、その後2年経過しても賃料債権は消滅することなく存続します。
民法では、上記の一定の事由として「請求」や「承認」などを定めています。
この「請求」というのは、債権者が債務者に対して支払を求めたりすることです。
しかし、単に債務者に対して請求書を送るだけでは時効中断の効力は認められません。それが認められるためには、請求したときから6ヶ月以内に訴訟や支払督促といった裁判所の手続を講じる必要があります。したがって、請求書を何度送っても、それだけでは時効の中断は認められません。 法律相談の際、こちらから「もう時効期間が経過しているので、相手が時効を主張してきたら負けますよ。」とアドバイスしますと、「いや、毎月請求書を送っ ているんで大丈夫ですよ。」という返事が返ってくることを非常に多く経験しますが、請求書を送り続けていても時効は中断しませんので注意してください。
また、この「請求」は、相手方に届くことが必要ですので、相手方に届いたことを証明する証拠を残すため、請求する際には、配達証明つきの内容証明郵便で請求してください。
次に、「承認」というのは、債務者が債権者に対して自らが債務を負っていることを認めたり、債務の一部につき弁済したりすることです。この「承認」は、 「請求」の場合とは異なり、後に訴訟提起したりするなどの手続は不要とされておりますので、「承認」のみによって中断の効力が認められることとなります。
人からお金を借りたまま長年返済していない場合には、最後の弁済期から10年(会社かにら借りているときは5年)で時効になりますが、この期間が経過する前に少額でも返済しますと、それが債務を「承認」したこととなり、この時点で時効が中断します。
債権者側からしますと、少しでも返済してもらい時効を中断することを検討するべきですし、債務者側からしますと安易に返済をしないことに留意すべきです。
消滅時効の中断事由は、この「請求」、「承認」のほかにも、差押、仮差押などがあります。詳しいことは、当事務所にご相談ください。