相続人がいないとき:相続財産管理人
ある人が亡くなったけれども相続人がいるのかいないのか分からない場合や、相続人が全員相続放棄をした場合には、その亡くなった人にお金を貸していた人は、だれに対して支払請求をすればよいのか困ってしまいます。
亡くなった人に財産がない場合にはあきらめることもできますが、財産が残っているような場合には、その財産を差押えるなどして貸したお金の回収を図ることを考えなければなりませんが、その財産の所有者がいなくなってしまっている状況ではどのようにすればよいのでしょうか。
このような場合、そのような利害関係を有する人の請求によって、その財産について「相続財産管理人」を選任するという制度が設けられています(民法951条、952条第1項)。今回は、この「相続財産管理人」について説明します。
相続財産法人
通常、相続人がいれば、相続人が被相続人の権利義務を承継します(民法第896条)。しかし、相続が開始したけれども相続人のあることが明らかでない時や相続人がいない場合には、相続財産は「法人」となります(同法第951条)。この相続財産法人は、それ自体が管理と清算等を目的とする一種の財団法人となって独立の権利義務の帰属主体となるのです。
相続財産管理人の選任
相続財産法人が成立した場合に、利害関係人又は検察官の請求があると、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します(同法952条第1項)。
利害関係人とは、「相続財産の帰属について法律上の利害関係を有する者」をいうとされています。具体的には、相続債権者や相続債務者、受遺者、特別縁故者等が利害関係人に当たります。たとえば、亡くなった人にお金や家を貸していた人、亡くなった人から物を預かっていた人、亡くなった人と内縁関係にあった人、亡くなった人を長期間看護してきた人などがこの利害関係人にあたります。
このような人は、まず亡くなった人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をして相続財産管理人を選任してもらうことができます。相続財産管理人は特別な資格を有する者でなければいけないという定めはありませんが、後で説明しますようにいろいろな法律行為をすることになりますので、法知識を有している弁護士が選任されることが実務上多いです。
そして、この相続財産管理人が選任された後、この管理人に対して、貸したお金の返還の請求や、賃貸していた建物の明け渡しを請求したり、亡くなった人の療養看護にあたってきた特別縁故者であることを認めてもらうよう請求したりすることになりますが、相続財産管理人が選任された後の手続は、次回に説明します。