セクハラについて

セクハラについて

今回はセクシャルハラスメント、いわゆるセクハラについてお話ししようと思います。いまや日常的に使われる言葉ですが、セクハラとは職場における性差別な要素を含む一切の言動、端的にいえば性的いやがらせを意味します。

セクハラには上司が職務上の地位を利用して解雇などの脅しや昇進への条件として性的関係を強要する①「対価型ハラスメント」と呼ばれる類型と、下品な性的言動・行為を繰り返しによって女性・男性にとって不快で耐え難い職場環境を作り出す②「環境型ハラスメント」と呼ばれる類型に分けられます。

日本では、雇用機会均等法11条によっていずれの類型のセクハラの発生を防止し、適切に対応するための措置を事業主に義務付けています。

セクハラの違法性

セクハラを受けた場合、民事上の責任追及として損害賠償の手段が考えられます。

もっとも、セクハラ行為があれば常に損害賠償が認められるわけではなく、一般的な基準としては、「行為の態様、行為者である男性の地位、年齢、被害女性の年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の態様等を総合的にみて、それが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、性的自由ないし性的自己決定等の人格権を侵害するものとして、違法となるべきものである」(名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日)と判示した裁判例が参考になると思います。  

また、
①「対価型ハラスメント」に該当するような行為の場合、行為者は刑事上の強制わいせつ罪や強要罪に該当する場合もありえます。
②「環境型ハラスメント」においては、名誉毀損罪などの刑事上の責任が成立する場合があります。

裁判例におけるセクハラの具体例 実際にセクハラとして違法の評価がなされた例として、東京高裁平成20年9月10が挙げられます。

この事案では、「エイズ検査を受けたほうがいい」、「純粋そうに見えてなんでも知っている」旨の発言を職務中あるいは懇談会等の席上で繰り返していたという事実について違法性を認めています。もっとも、当該事案において前審東京地裁平成20年3月26日判決は上記発言を職場における雑談の域をでないもので違法性がないとの判断をしており、セクハラの違法性の認定は裁判官の法的評価によっても幅があるといえます。

セクハラについての使用者の責任 加害者のセクハラにつき違法性が認められた場合、使用者も前述した雇用機会均等法11条の基づくセクハラ防止義務違反、あるいは民法715条に基づく使用者責任として損害賠償義務を負います。たとえば、男性雑誌編集長の、部下の女性の性的交友関係に関する悪評・中傷を振りまいた行為が、不法行為による損害賠償の対象となり、従業員の行為が会社の業務に関連してなされたものである以上、会社も使用者責任(715条)を負う、とされています(福岡地判平成4年4月16日)。

また、女子トイレにおける盗撮事件に対する使用者の対応が不適切であったとして損害賠償が認められた事例もあります(仙台地判平成13年3月26日)。 したがって、使用者としては、セクハラが許されないことを従業員に周知徹底するとともに、問題が起きた場合には迅速かつ厳正に対処することを求められていることに注意してください。