パワハラを法律で解説

パワハラを法律で解説

今回は、職場のパワーハラスメント、いわゆるパワハラについてお話しようと思います。

まず、パワハラといっても、どのような行為がパワハラにあたるのかは、簡単に判断できるものではありません。このパワハラとは何かということに関して、厚生労働省のワーキンググループでは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」を職場のパワハラと定義しています。また、以下の類型があるものとされています(ただし、これらですべてのパワハラを類型化、把握することはできていないことにも言及されています。)

(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・暴言等)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

これに対して、私たち弁護士がパワハラについて考えるときには、法的な観点で、パワハラに関する請求がどのようなものになるのか、それが成り立つ請求なのかということを検討します。

具体的には、パワハラを受けた従業員から、パワハラを行った上司や同僚など個人に対する不法行為責任(民法709条)、あるいは、企業に対して、加害者のパワハラ行為が事業の中でなされたものであるとして使用者責任(民法715条)、パワハラを防止できるような社内の体勢の整備、監督を怠ったものとして企業自身の不法行為責任(民法709条)を考えることになります。

これらの責任の追及は原則として損害賠償を請求する、パワハラによって被った精神的な損害=慰謝料や、暴行など直接的な行為があったり、パワハラが原因で診療内科などへ通院するようになったという場合には支払った治療費が請求されることになります。

そして、この損害賠償請求が認められるものかというのは、加害者とされる従業員の行為が違法かどうかという点から検討します。

具体的には、上司などの発言や行動が、業務上の指示や指導の範囲に止まるといえるのか、それとも許容限度をこえる行為であると評価すべきかという点で検討します。これは、発言や行動の内容(どのような場面で何を言ったか、行ったのか)や、それらが繰り返し行われているか(いつごろから、どれくらいの頻度で)、会社としての対応、支援の状況(状況を確認し加害者側へ注意をしたことがあるか、加害者が注意を受けた上でもパワハラが続いているのか)など具体的な事実関係から検討することになります。

その上で、企業としては、加害者側従業員個人の問題だという認識でいたのではパワハラを防止することはできませんし、会社の責任を問われる場面、会社に対する損害賠償請求に対して、その責任を否定することができない場合も出てきます。

そこで、使用者として、会社内でパワハラに対しての認識を共有し、パワハラに対する相談窓口を定めたり、研修会を開くなど、パワハラを予防する体勢、環境を整えることが必要になります。