特別受益の対象となるもの
では、どのようなことをすると、特別受益に該当することになるのでしょうか。
まず、亡くなった人から生前に次の①〜④のことをしてもらった場合には、どれも特別受益となります。
①遺贈
遺贈とは、遺言により財産を譲り渡すことをいいます。相続人のうちの一人が、遺言によって一定の財産を取得した場合が、これにあたります。
②婚姻のための贈与
相続人のうちの一人が、結婚する際に独立資金をもらっていたような場合が、これにあたります。
③養子縁組のための贈与
相続人のうちの一人が、養子に出るときにお金をもらっていたような場合が、これにあたります。
④生計の資本としての贈与
相続人のうちの一人が家を建てるときに資金を出してもらった場合や、事業を始めるときにその開業資金を出してもらったという場合などが、これにあたります。
なお、学費を出してもらっていたというような場合には、それが一般的な教育の範囲を超えている場合(たとえば、私立大学の医学部の学費を全額出してもらっていたというような場合)には、この「生計の資本としての贈与」と認められます。
その他よく問題となる場合
特別受益に該当するのかがよく問題となるものとしては、次のものがあります。
①相続人の一人が病気や障害を抱えていて、その治療費や医療費を出してもらった場合
このような場合、それは家族として助け合わないといけない義務(扶養義務)を行っていただけで、特別受益としては認められないと考えられます。
②相続人の一人が自分の家を建てるために、土地をタダで使わせてもらっていた場合
この場合は、特別受益として認められることが多いと考えられます。
【応用問題】
③相続人の一人だけが、亡くなった人の生命保険金を受け取った場合
亡くなった人がその相続人の一人を保険金の受取人として生命保険に加入していた場合、受取人としてその相続人が受け取る保険金は、亡くなった人が残した財産ではなく、保険金の受取人自身の権利としてもらえるお金であると考えられています。ですので、原則として特別受益にはなりません。
しかし、例えば、相続財産が300万円しかないにもかかわらず、受取人である相続人が2000万円もの生命保険金を受け取ったような場合には、その相続人が他の相続人と比べてあまりにも有利に扱われることになってしまいます。したがって、このような場合には、実務では、生命保険金を受け取った相続人が特別受益を得たものとして扱われています。
遺留分との関係
以上のように、相続人の中に生前に財産をもらっていた人がいると、そのもらった財産は特別受益として扱われます。
もっとも、そのもらった財産が高額になると、他の相続人の遺留分を侵害することになり、侵害された相続人から遺留分減殺請求や遺留分侵害額請求を受ける場合があります。
※遺留分については、詳しくは「遺留分とは」を参照。